やっと観た名作映画「マイライフ・アズ・ア・ドッグ」 カート・ヴォネガットさん推薦作品?

敬愛するカート・ヴォネガットさんの「タイムクエイク」という作品の中に、こんな文章がある。

「史上第一位の傑作映画は、脳みそが半分でもある人間ならわかるはずだが、『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』だ。史上第二位の傑作映画は、『イヴの総て』だ」

アマゾンのKindleで、少しずつヴォネガット作品が読めるようになってきたので、発売されたら購入して、ずっと読んでいる。
この「タイムクエイク」を最初に読んだのは、最初に単行本が発売されたと同時。
単行本の奥付を見ると発行が1998年になっている。

それからこの15年くらいの間に何度か再読したはずなのだが、今回Kindleで読んで、その部分にはじめて気がついた。
何故だろう?何故いままで気がつかなかったのだろうか?不思議。
とにかくヴォネガット氏のいちばん好きな映画がわかったので、これは観てみるしかないと思って、とりあえずレンタルショップで借りてきた。

この映画は1985年の作品で、1950年代のスウェーデンのごく普通の風景を描いた映画で、アメリカを中心に世界中で大ヒットしたらしい。
1985年というと、筆者は三十代半ばだ。
まあ映画なんて観る余裕なんてなくて、毎日どうやって暮らしていこうと思っていた時期に重なるような気もする。
もちろん題名くらいは知っていて、その後もこの映画のことは観てみたいと思いながら十年とか二十年とかの時間が過ぎてしまった。

文学や映画は系統的に観ているわけではないので、「こんなのも観てないの?」とか「こんなのも読んでないの?」とかいうことは、わりと頻繁にある。
この映画もそのひとつだ。

スウェーデン映画というと、こないだWOWOWで観た、「スウェーディッシュ・ラブ・ストーリー」っていうのがあったが、これは1970年、筆者がまだ中学生のころ。
当時「小さな恋のメロディ」とほぼ同時期に上映されたらしいが、地方にいた筆者は全然しらなかった。
この「マイライフ」と「スウェーディッシュ」は、そう思ってみるからかもしれないが、同じにおいがするように思える。
風景とか、性的な開放感とか、そんな部分かな。

この映画、最初は、直訳すれば「犬のような私の人生」だな、とか思って、相当悲惨な映画だろうと思っていたが、なんのことはない12才の少年の青春ストーリーだった。
筆者は、ボーイミーツガールものは、わりと好きでいろんないわゆる青春映画は好んで観てきたつもりだ。
でもこの映画を観て、いいな、とか好きだな、とかは思っても、ヴォネガットさんのように、これが最高の映画だなんてことは残念ながら思えなかった。

やっぱり筆者とヴォネガットさんの生まれ育った世代と環境があまりに違いすぎるからだろうか?
筆者も、これが青春時代というのだろうか、と思えるような時間は多少過ごしてきたが、この映画で描かれる青春時代とはものすごく違っていて、ほとんど、あぁそうだったな、とか重なる部分はほとんどないように思えた。
やっぱり映画っていうのは、写真のようなもので記憶、とか思い出とかそんなものにものすごく影響をされるようなものなのだろうなとかこの映画を観ながら思った。

この映画自体は、中心は純朴な少年と女になりつつある美少女のストーリー、そしてこれがこの映画の好きな部分なのだが、少年を取り巻くほとんどの登場人物が何らかの形でイカれていること。そして優しい。
このあたりが大好き。
現実って、傍から見ればこんな感じでイカれてるのかもしれないなとも思えます。

アマゾンで調べてみると、数年前にブルーレイが発売されている。
これは買うしかないでしょうということで、購入。
届いたらもう一回観てみるつもりだ。


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